個人事業主が使える補助金・助成金一覧と申請の流れを解説

私は中小企業診断士として12年、創業期の事業者の補助金申請を100件以上サポートしてきました。この記事では、個人事業主が使える補助金・助成金を一覧で整理し、補助金と助成金の違い、申請から受給までの流れ、つまずきやすい点まで一気に説明します。
先に一番大事なことを言っておくと、補助金は「申請すれば必ずもらえる」ものではありません。審査があり、採択されて初めて受け取れます。ここを誤解したまま動くと痛い目を見ます。
個人事業主が使える補助金・助成金・給付金の違い

言葉が似ていて混同されがちですが、補助金・助成金・給付金は性質が違います。まずここを押さえると、自分が何を探すべきかがはっきりします。
補助金とは
補助金は、国や自治体の政策目的に沿った取り組みに対して、経費の一部を補助するお金です。販路開拓や設備投資などが対象になります。
特徴は、審査があること。要件を満たしていても、計画の内容次第で採択されないことがあります。さらに原則として後払いで、採択後に事業を実施し、実績報告と検査を経てから支払われます。
返済は不要ですが、対象経費の証拠書類や実績報告は必須です。ここを軽く見ると、後で苦労します。
助成金とは
助成金は、主に雇用関係の制度で、要件を満たせば原則受給できるものが多いのが特徴です。厚生労働省が所管するものが中心になります。
ただし、労働者を雇用していることが前提となるものが多い点に注意が必要です。従業員を雇っていない一人親方の個人事業主だと、そもそも対象外になる助成金が少なくありません。
給付金・支援金とは
給付金や支援金は、特定の状況に対して支給されるお金です。災害や感染症などで事業や生活が打撃を受けたときの一時的な支援が代表例です。
補助金のように使い道を提案して競う性質ではなく、要件に該当すれば支給される形が中心です。常設の制度ではなく、状況に応じて創設・終了します。
| 種類 | 主な目的 | 審査 | 受給タイミング |
|---|---|---|---|
| 補助金 | 設備投資・販路開拓など | あり(採択が必要) | 原則後払い |
| 助成金 | 雇用・労働環境の改善 | 要件を満たせば原則受給 | 事後支給が中心 |
| 給付金・支援金 | 災害・困窮時などの支援 | 要件該当で支給 | 状況により異なる |
個人事業主が受給できる補助金一覧
ここからは、個人事業主が実際に申請できる主要な補助金を紹介します。補助率や上限額は公募回ごとに変わるため、申請前に必ず公式サイトの最新の公募要領を確認してください。

中小企業新事業進出補助金
既存事業とは異なる新たな事業領域へ進出する取り組みを支援する補助金です。新分野展開や業態転換を考えている個人事業主が検討対象になります。
制度の内容や公募状況は更新されるため、申請を考える場合は中小企業庁の最新案内を必ず確認してください。コロナ禍に創設された事業再構築補助金の流れをくむ制度で、継続状況の確認は欠かせません。
小規模事業者持続化補助金
私が個人事業主に最初におすすめするのが、この小規模事業者持続化補助金です。自ら策定した経営計画に基づく販路開拓等の取り組みを支援する制度で、ハードルが比較的低いのが理由です。
通常枠の補助率は原則3分の2。インボイス特例を適用する場合は、上限に加算があります。
参考までに、第17回公募の申請受付締切は2025年6月13日、採択結果は2025年9月末ごろ公表予定でした。申請はすべて電子申請のJグランツで行います。
ものづくり補助金
正式名称は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金です。生産性向上に資する革新的な製品・サービス開発や、生産プロセス改善などを支援します。
製品・サービス高付加価値化枠の補助上限は、従業員数に応じて750万円から2,500万円。補助率は中小企業2分の1、小規模企業・小規模事業者等は3分の2です。
海外展開を狙うなら、グローバル枠が対象になります。設備投資の規模が大きい個人事業主向けの制度です。
IT導入補助金
会計ソフトや予約システムなど、業務効率化やセキュリティ対策のIT導入費用を支援する制度です。デジタル化を進めたい個人事業主と相性がよいです。
通常枠の補助率は2分の1以内。最低賃金近傍の事業者等は3分の2以内に引き上げられる類型があります。
通常枠の補助額は5万円以上450万円以下。通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠などの公募スケジュールは、公式サイトで随時更新されます。
中小企業省力化投資補助金
人手不足に悩む事業者の省力化投資を支援する制度です。一人で店を回している飲食店や小売店などで、出番が多い印象があります。
カタログ注文型は、カタログに掲載された設備の導入が対象で、補助率は2分の1以内。一般型は、個別の現場に合わせた省力化設備の導入などが対象です。
公募や申請受付は、公式サイトで公表される最新の公募要領に従ってください。
| 補助金 | 補助率 | 補助上限の目安 |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 原則2/3 | 枠により異なる(インボイス特例で加算あり) |
| ものづくり補助金 | 中小1/2・小規模等2/3 | 750万〜2,500万円(高付加価値化枠) |
| IT導入補助金 | 1/2以内(条件で2/3以内) | 通常枠5万〜450万円 |
| 中小企業省力化投資補助金 | 1/2以内(カタログ注文型) | 公募要領による |
個人事業主が受給できる助成金一覧
助成金は雇用関係が中心です。従業員を雇っている個人事業主であれば対象になるものが多いですが、一人で事業をしている場合は使えないケースがほとんどです。ここは正直に言っておきます。

キャリアアップ助成金
非正規で雇っている従業員を正社員に転換したり、待遇を改善したりした事業主を支援する助成金です。アルバイトやパートを雇っている個人事業主が活用しやすい制度です。
業務改善助成金
事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて設備投資などで生産性を向上させた中小企業・小規模事業者を支援します。賃上げと設備投資をセットで考えている場合に向いています。
人材開発支援助成金
従業員に対する職業訓練などを実施した事業主に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。人を育てたい事業者向けです。
雇用調整助成金
景気変動などで事業活動の縮小を余儀なくされた際に、従業員の雇用を維持するため休業手当などの一部を助成する制度です。経済情勢に応じて要件が変動するため、申請時は最新情報の確認が必要です。
いずれの助成金も、事業主として労働者を雇用していることが前提です。雇用がないなら、まずは補助金から検討するのが現実的です。
補助金・助成金以外で個人事業主が使える支援制度

補助金や助成金だけが支援ではありません。出費を抑える免除・猶予の制度も、資金繰りを助けてくれます。意外と見落とされがちな部分です。
休業協力・事業継続に関する支援金
災害や感染症など、自分の責任ではない事情で事業の継続が難しくなったときに、自治体などが支給する支援金です。状況に応じて創設されるため、常設ではありません。
こうした支援金は公募期間が短いことが多く、情報を取りこぼすと申請できません。自治体の広報をこまめに確認しておくことを勧めます。
住居確保給付金
離職や廃業、収入の大幅な減少などで住まいを失うおそれがある人に、家賃相当額を支給する制度です。事業がうまくいかず生活基盤が揺らいだときの、いわばセーフティネットです。
保険料・年金の免除・納付猶予制度
収入が大きく減ったとき、国民健康保険料・保険税や国民年金保険料には、減免や納付猶予の仕組みがあります。もらうお金ではありませんが、出ていくお金を抑えられます。
特に国民年金は、未納のまま放置すると将来の年金額に響きます。払えないなら、放置せず免除や猶予の手続きを取るべきです。これは現場で何度も伝えてきたことです。
個人事業主が補助金・助成金を使うメリットとデメリット
使う前に、いい面と注意すべき面の両方を知っておいてください。正直に言うと、メリットは大きい一方で、後払いと手続きの負担は軽く見ない方がいいです。

原則返済不要で経営に干渉されない
最大のメリットは、原則として返済しなくてよいこと。融資と違い、毎月の返済に追われません。
出資のように経営への干渉もなく、見返りを求められることもありません。受け取ったお金で、人材や設備に投資し、事業の継続や成長につなげられます。これが補助金の本当の価値です。
後払い・申請が通らないリスク
補助金は審査があり、要件を満たしても採択されないことがあります。申請すれば必ずもらえる、という前提で動くのは危険です。
さらに原則後払い。先に自己資金で経費を支払い、実績報告と検査を経て、後からお金が入ってきます。つまり一時的に立て替えが必要です。ここを見落とすと、採択されても資金がショートします。
手続きと申請期間の負担
申請書類の作成、実績報告、証拠書類の整理と、手続きの負担は決して小さくありません。本業の合間にやると、想像以上に時間を取られます。
加えて、公募回ごとに締切が決まっています。締切を1日でも過ぎれば、その回では申請できません。私の経験上、つまずく人の多くは「気づいたら締切が過ぎていた」パターンです。
補助金・助成金の申請から受給までの流れ
全体像をつかんでおくと、動きやすくなります。大きく分けて、事前準備・計画の届出・実施と支給申請の3段階です。

事前準備を済ませる
まず、自分の事業が対象になるかを公募要領で確認します。補助金系は中小企業・小規模事業者等が対象のことが多く、個人事業主が常に対象とは限りません。
小規模事業者の定義は業種で異なります。商業・サービス業は常時使用する従業員5人以下、製造業その他は20人以下が目安です。自分がどの区分かを最初に確かめてください。
電子申請の準備も必要です。たとえば持続化補助金やIT導入補助金は、JグランツなどのIT環境を整えていないと申請が始められません。
実施計画の作成・届出
次に、補助金で何をどう実現するのかを示す経営計画・実施計画を作成します。ここが採択の合否を分ける、いちばん大事な工程です。
審査する側が読んで、政策の目的に沿っていて実現性があると納得できるか。ここを意識して書けるかどうかで、結果が大きく変わります。
支給申請と受給
採択されたら、計画に沿って事業を実施します。その後、実績報告と証拠書類の提出、検査を経て、補助金が支払われます。
繰り返しになりますが、お金が入るのはこの最後の段階です。実施から入金まで時間が空くことを、最初から見込んでおいてください。
申請でつまずきやすい点と失敗しないコツ

100件以上の申請を見てきて、落ちる申請には共通点があります。逆に言えば、そこを避ければ採択率は上がります。
採択されない申請書のよくある特徴
落ちる申請書に多いのが、やりたいことだけ書いて、なぜそれが必要かと、どんな効果が出るかが薄いパターンです。審査員は背景と効果を見ています。
私がいつも伝えるのは、「自分の言葉で具体的に書く」こと。テンプレートを埋めただけの抽象的な計画は、まず通りません。数字や具体的な行動で語ってください。
後払いに備えた資金繰りの考え方
補助金は後払いです。経費を先に払える資金があるか、ここを必ず確認してください。
自己資金で足りないなら、つなぎの融資を併用する選択肢もあります。「補助金が出るから大丈夫」と支払いを進めて、入金までの数か月で資金が尽きる。これが一番もったいない失敗です。
専門家に相談すべきケース
申請額が大きい、計画が複雑、本業が忙しくて書類に時間を割けない。こうした場合は、中小企業診断士や認定支援機関に相談する価値があります。
正直に言うと、持続化補助金のように比較的シンプルな制度なら、自力で十分申請できます。一方で、ものづくり補助金のように計画の作り込みが要る制度は、専門家を入れた方が結果につながりやすいです。ここは制度で見極めてください。
よくある質問
相談現場でよく聞かれる3つに、私の言葉で答えます。

よくある質問
最後に一つだけ。補助金は「知っていて、期限内に動いた人」だけが受け取れます。今日できる最初の一歩は、自分の業種が対象になる制度を公式サイトで1つ確認すること。そこから始めてください。
